モーダルシフトとは? 課題やメリット・デメリットなど

近年注目を集めているモーダルシフトは、環境負荷の低減をはじめ、貨物輸送におけるさまざまな課題の解消が期待できる輸送方法です。この記事では、モーダルシフトの概要やメリット・デメリット、課題などについて解説します。
モーダルシフトとは?
まずはモーダルシフトとはどのようなものなのか、概要と注目を集めている背景について解説します。
モーダルシフトの概要
モーダルシフトとは、トラックなど自動車による貨物輸送を、環境負荷が小さい鉄道や船舶での移動手段へ転換することを指します。
トラックに比べると、鉄道や船舶は一度に大量の貨物輸送が可能です。貨物輸送の方法を転換することで、CO2排出量の削減にもつながります。トラックで輸送を行った場合と比較して、鉄道の利用では約90%、船舶の利用では約80%ほど、CO2排出量を削減できます。
モーダルシフトが注目される背景
モーダルシフトはCO2排出量を削減できるため、地球温暖化対策として注目を集めています。また、トラックドライバーの長距離運転による負担を軽減できるため、労働力不足の解消や働き方改革の観点からも期待されています。
ほかにも道路混雑の緩和や交通事故の縮小など、さまざまな社会問題への対応策としても有効ではないかと言われています。
モーダルシフトのメリット
モーダルシフトには、環境負荷の低減をはじめ、さまざまなメリットがあります。ここではモーダルシフトの主なメリットを3つ紹介します。
CO2排出削減による環境への貢献
1トンの貨物を1キロメートル輸送する際、トラックの場合は208グラム、鉄道の場合は20グラム、船舶の場合は43グラムのCO2を排出します。同じ量、同じ距離の輸送において、トラックは多くのCO2を排出しますが、鉄道や船舶を使用することでCO2排出量を大幅に抑えることが可能です。
CO2排出量の削減は、環境負荷を減らし、地球温暖化対策としても有効な手段です。
労働力不足の解消と物流効率の向上
鉄道や船舶は、トラックよりも大量の貨物を一度に輸送できるため、物流効率の向上につながります。輸送距離が長いほど輸送費用も割安になるため、モーダルシフトによって輸送コストの削減も可能です。
また、少子高齢化や労働人口の減少、働き方改革関連法の施行に伴う労働時間の上限規制などによる労働力不足が問題となっています。しかし、モーダルシフトによりトラック輸送よりも少ない人員で多くの貨物を運べることから、労働力不足の解消にも貢献します。
トラックドライバーの負担軽減
トラックだけで輸送を行う場合、数百キロメートルの距離を走行することも多く、ドライバーは出発した拠点に戻るまでに数日かかることもよくあります。
モーダルシフトの場合でもトラック輸送は必要になりますが、「駅や港など、鉄道や船舶での輸送を行うための転換拠点まで」がトラック輸送の範囲となります。そのため、時間や距離が大幅に短縮されますので、長時間運転や長時間労働の解消につながり、ドライバーへの負担も軽減されます。
モーダルシフトのデメリットや課題
モーダルシフトには多くのメリットがある反面、デメリットや課題もあるため、導入が進まないという現実があります。ここではモーダルシフトの主なデメリットや課題を3つ紹介します。
インフラ整備の不足とコスト負担
モーダルシフトを推進するためには、駅や港などの転換拠点や輸送経路のインフラ整備が欠かせません。例えばトラックのまま乗船可能なフェリーは現状では就航している港が少なく、航路も限定されています。また、転換拠点でのコンテナ積み降ろしはクレーンやリフトトラックなどが必要なため、設備が整ったターミナルや港でなければ作業できないという点もデメリットのひとつです。
また、鉄道や船舶は大量輸送の際のコスト削減につながるのがメリットではありますが、一般的には500キロメートル以上の長距離輸送でなければ逆にコストが割高になるおそれがあります。
輸送時間の増加による影響
トラック輸送では、出発拠点から目的地まで任意のタイミングで走行が可能ですが、鉄道や船舶は運行ダイヤに従う必要があります。また、駅や港などの転換拠点での貨物の積み替え時間も発生するため、トラックでの輸送に比べてトータルの輸送時間が長くなってしまう可能性があります。また、貨物の積み替えの際には荷崩れや荷擦れなどのリスクも伴うでしょう。
地域や業界間での協力の必要性
モーダルシフトを推進するためには、地域や業界間が連携してインフラ整備や制度改革を進めていく必要があります。現状や課題を整理し、モーダルシフトを推進するための具体的な対策を講じることが大切といえるでしょう。
まとめ – モーダルシフトの今後に注目していきましょう
地球環境や社会にやさしい運送方法として注目を集めるモーダルシフトは、メリットが多い反面、まだまだ課題が多いのも現状です。持続可能な社会の実現に向けて、モーダルシフトの今後に注目していきましょう。